東北大学病院 肝胆膵外科・胃腸外科

ホーム      診療案内      対象疾患(肝胆膵外科)      膵臓癌

診療案内

膵臓癌

膵臓癌

膵癌(膵臓癌)は種々の癌の中で、最も治療成績(予後)の不良な難治性悪性腫瘍の代表です。膵癌の生存期間が短い理由として、下記のような原因が考えられます。

  1. 初期症状が乏しいため、早期癌として見つかることが極めて少ない。

  2. 診断時既に進行癌として見つかるため、切除が困難な場合が多い。

  3. 切除可能であっても、手術が大侵襲(体への負担が大きい)・高難易度で合併症発生頻度が高い。
  4. 切除されても、高頻度に再発を来す。

  5. 抗がん剤・放射線に対する感受性(効き目)が乏しい。

膵癌切除は必ずしも容易ではありませんが、長期生存を可能にする唯一の方法が外科治療である、という状況で、当科では積極的な切除を行いながら、治療成績向上にむけ取り組んでいます。

抗がん剤の効き難い膵癌に対しても21世紀に入り、幾つかの抗がん剤及び併用療法(2種類以上の抗がん剤の組み合わせ)が有効であることが報告され、保険適応として認められています。これら有効な抗がん剤を軸に放射線・手術などを組み合わせた、いわゆる「集学的治療」が治療成績向上のために行われております。

当施設の膵癌に対する取り組み

1)術前治療(抗がん剤治療・放射線治療)
膵癌は切除後も高頻度に再発を来します。従って、切除後の再発予防は必須といえます(膵癌診療ガイドライン)。しかし、大侵襲手術後に体力低下・合併症で、術後抗がん剤投薬が遅れる、投薬できないといったことが起こりえます。そこで、体力維持されている、手術前に抗がん剤投薬を行い、抗がん剤との相性(臨床的感受性・副作用予測)を見ておこうというものです。抗がん剤投薬で経過を観察しながら、手術・抗がん剤治療のどちらが、本当に患者さんにとって望ましいかをきちんと決定することができ、無益な手術を回避することができます。

現時点では、術前治療は標準治療ではないため、適切に計画された臨床試験で実施することが推奨されています(膵癌診療ガイドライン)。当施設を中心として全国の膵癌治療センター施設が協力しながら、術前治療の臨床試験を進めています(膵癌術前治療研究会)。

2) 後腹膜・神経叢一括郭清による根治切除
膵癌は、周囲組織に広範に浸潤(癌が根を下ろした状態)します。本体の腫瘍を単に切除するだけでなく、腫瘍の浸潤部をきちんと取り去る手術が必要であり、きちんと取り去る切除が行われた場合に生存期間が長いという報告が多数あります。我々は、膵臓周囲で癌が根を張りやすい部分(神経・リンパ節)をまとめて切除する術式を採用しており、この術式で根治性が高い切除が可能になります。

3) 周囲臓器合併切除
膵癌は周囲臓器や近傍の太い血管(門脈・腹腔動脈など)にも、浸潤を来す場合がしばしばあります。門脈浸潤がある場合にも切除の意義があること(膵癌診療ガイドライン)が示されていますが、手術の難易度が高まるため、切除を控える施設もあります。我々は、切除の意義があると判断される限り、積極的に切除を行っております。

4) 膵切除クリニカルパスの導入
膵手術は術後合併症が多く、一定の経過で回復することが困難なものとされてきました。しかし、我々は膵手術(膵頭十二指腸切除・膵体尾部切除・慢性膵炎手術)のクリニカルパスを導入し、治療経過・目標を患者さんと医療者側で共有しながら、入院治療を進めております。

5) 術後補助治療
膵癌の再発を予防するために、術後は抗がん剤投薬を行うことが推奨されています(膵癌診療ガイドライン)。日本で行われた臨床試験で、飲み薬の抗がん剤による再発予防が最も効果的であることがわかり、標準治療として確立しています。我々も、切除後の回復を支援し、外来化学療法センターと連携して、通院で抗がん剤投薬を安全・確実に施行しております。また、遠方から来院され通院が困難な患者さんには、地域医療連携センターと当科関連施設をネットワークし、自宅に近いところで治療ができるよう配慮しております。

6) 切除不能膵癌に対する治療
膵癌は診断された時点で、高度な浸潤(周囲の重要な臓器に根を張った状態)や遠隔転移(離れた臓器に“飛び火” )等の理由で、切除ができないことがしばしばあります。しかし、一部の方には抗がん剤や放射線治療がかなり効果を示す場合があります。当施設では、手術以外の治療(抗がん剤や放射線治療)が一定期間、効いている場合に、改めて切除の可能性を検討しています。常に切除の可能性を追求することで、当初切除ができなかった方の一部は、実際に切除手術を受けています。この場合には、抗がん剤治療や放射線治療が主たる治療であり、手術はそれを補う役割だと考えられます(補助的外科切除)。抗がん剤や放射線治療だけでは膵癌は根治できないため、有望な治療となる可能性がありますが、まだ確立した治療ではないため臨床試験として実施しています。

膵癌治療は高度な専門性を必要とするため、専門施設で行うことが推奨されています(膵癌診療ガイドライン)。当施設での治療者数も近年、急増しております。我々は、膵癌治療の先端・専門施設としてより良い治療を提供するために、消化器内科・放射線診断科・放射線治療科・腫瘍内科・緩和医療科・地域医療連携センターなどとチームを組み、総合的に診療を進めております。

また、上記以外にも様々な取り組みを行い、治療成績向上に取り組んでおります。膵癌治療はまだまだ発展途上であり標準治療の成績も満足いくものではありません。最善の治療は、適切に計画された臨床試験に参加することで得られます。担当医から臨床試験の紹介があった場合には、前向きに参加を御検討下さい。

平成27年6月更新
元井冬彦(文責)

対象疾患

診療案内

連絡先

肝胆膵外科,胃腸外科外来

022-717-7740

病棟

東8階病棟

022-717-7626

東13階病棟

022-717-7591

医局

022-717-7205

022-717-7209