胆管癌
胆管癌
胆管癌とは?
胆管は、胆道という胆汁を肝臓から十二指腸まで流す管で、その部位により、肝内胆管、胆管、胆嚢、十二指腸乳頭部に分かれている部位の一つです。したがって胆管癌は胆道癌の一つとなります。
本邦では、肝内胆管癌は、肝臓内より発生するため原発性肝癌に分類され、胆管癌と言えば肝臓外の胆管、つまり肝外胆管を指すのが一般です。
そこで、本項では肝外胆管癌について記載します。
治療法
* 切除
* 放射線療法
* 化学療法
現在までのところ、胆管癌は手術が第一であると言われています。しかし、胆管癌は欧米では少なく大規模調査がなされておらず、信頼性の高い結果がないので、当科の胆管癌のうちの肝臓に近い胆管癌発生部位で肝切除が伴うことの多い肝門部胆管癌および上部胆管癌の治療成績で説明します。
当科においては、以前より胆管腔内照射(図1)を組み合わせた積極的な集学的治療(切除できないときにいろいろな治療を組み合わせる)を行ってきました。
当科における治療方針は図2の通りです。
現在のところ、切除が第一の治療法と考えられるため、当科においてはまず、各種画像診断にて切除の可能性(癌が遺残無く切除できること)を探り、根治切除(癌を取りきること)が可能と判断されれば切除を行うこととしています。このようにして治療法が選択された患者さんの治療成績を図3に示します。
図3の通り、CurA+B(癌が取り切れている状態)であれば、癌が遺残したCurCや、RALS(切除が不能で進行癌に、放射線と抗癌剤を投与した群)に比較して良好な成績ですが、胃癌、大腸癌に比べると、かなり治療成績(生存率)が不良です。外科的な技術革新も昨今は頭打ちになり、また拡大手術が様々な癌で見直しがなされている中、新たな治療が望まれています。
2005年、アメリカ メイヨークリニックのRea DJらは、肝門部胆管癌に対して術前化学放射線療法(以後NACRT)施行後に肝移植を施行し著明な予後向上と再発率の低下を報告し、難治性といわれた胆道癌の新たな治療が進みつつあると考えられています。しかし、本邦では肝門部胆管癌に保険適応が無いのはもちろんですが、胆管癌に対するNACRT後の安全性は確立されてはいません。上記メイヨークリニックのグループは、NACRT後の肝移植でもレシピエントとグラフト肝の生存には差は無いものの、動脈および門脈合併症が通常の移植よりも多い、と報告しています。本邦では肝門部胆管癌の手術は、肝葉切除および尾状葉切除、さらに門脈合併切除が一般に施行されるので、脈管の合併症以外に肝不全が懸念されます。
そこで当科では、予備試験後にNACRT第I相試験を行っており、新しい胆管癌の治療に取り組んでいます。治療計画は図4の通りです。2008年中には結果が公表できると考えています。
化学療法に関して
I. 切除不能・進行胆管癌
1. ゲムシタビン(商品名ジェムザールR)
ゲムシタビンは代謝拮抗薬に属する薬剤で非小細胞癌に効果を認められている抗癌剤です。肝胆膵領域癌としては2001年4月に膵癌に保険適応となり、 今日では膵癌の標準治療薬となっています。切除不能膵癌および術後補助療法として生存期間延長などの有効性を示しています。
胆管癌に対しても2006年6月に保険適応となり、欧米の結果と合わせ標準治療薬として第1選択になりつつあります。
2. TS-1(商品名:ティーエスワンR)
国立がんセンター中央病院で行われた胆道癌に対する前期第II相試験が19人に対して行われ、4人にPR(部分的効果あり)が認められました。
そのうち胆管癌は2例のみですが, 全体として奏功率21. 1%, MST(生存期間中央値:試験に参加した半数の方が生存できた期間)8. 3ヶ月という結果でした。また、この結果を受けて行われた後期第II相試験では全国他施設で行われ、奏功率35%、MST 9. 4ヶ月と、前期II相試験より良好であったとの報告があり、TS-1が胆道癌に承認されました。
3. 標準治療
以上の結果を踏まえゲムシタビンを第1選択, TS-1を第2選択とするのが妥当と考えられます。図5に標準投与方法を示します。
標準治療
第1選択: ゲムシタビン
第2選択: TS-1
対象疾患
- 胆管癌
- 胆嚢癌
- 肝内胆管癌
- 肝癌(原発性・転移性)
- 肝血管腫・MFHなど
- 十二指腸乳頭部癌
- 肝内結石症
- 胆嚢・胆管結石症
- 先天性胆道拡張症、膵胆管合流異常
- 膵臓癌
- IPMN、MCN、その他の嚢胞性膵腫瘍
- 膵神経内分泌腫瘍
(インスリノーマ、グルカゴノーマなど) - 膵動静脈奇形
- 急性膵炎
- 慢性膵炎
- 脾臓疾患(ITP、脾悪性リンパ腫など)
- 腹腔鏡下膵体尾部切除術または核出術