東北大学病院 肝胆膵外科・胃腸外科

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診療案内

大腸癌肝転移に対する治療方針と新たな治療法の試み

はじめに

大腸癌肝転移の治療法として肝切除、化学療法、熱凝固療法が挙げられます。最近の化学療法の進歩は著しいものがありますが、それでも現時点において外科的切除が長期生存を期待できる唯一の治療法であることに変わりはありません。

ここでは手術対象が拡大し得た要因と化学療法の位置づけ、当教室における新たな治療法の取り組みについて説明致します。

手術の安全性の向上と肝切除対象の拡大

肝切除術の対象となるためには肝転移巣を安全かつ完全に切除することが前提となりますが、そのためには術前および術中における肝転移巣の数、腫瘍径および部位の正確な診断と術前の残肝予定肝量・機能の評価が重要となります。近年のマルチスライスCTに代表される画像診断の進歩により、肝転移巣の評価と腫瘍脈管系との位置関係の評価は格段に向上し、切除術式の様々な術前プランニングが可能となりました。さらに肝切除そのものや血管再建が安全に施行可能になったため、従来、切除不能と判断された症例に対しても積極的な切除術が施行されるようになり、腫瘍条件によって切除不能となる症例は減ってきています。

また正常肝の場合、術後の肝不全予防のためには通常全肝容量の30%以上の残肝量が必要とされており、拡大右葉切除や3区域切除以上の広範肝切除が必要となる場合には、切除予定領域の門脈塞栓術を施行することで術後の肝不全のリスクを軽減し、より確実な安全性を確保すことができるようになりました。当科ではこのような治療法も積極的に取り入れております。

化学療法の位置づけ

大腸癌肝転移巣に対して治癒的な肝切除術を施行したとしても,再発率が40-80%と高いことが問題でした。残肝再発が最も多いため、特に日本を中心に補助肝動注療法が試みられてきましたが、残肝再発率を減少させても肝外再発が多いため生存期間の延長に寄与しないとする報告が多いのが現状です。

近年の切除不能・再発大腸癌に対する抗癌剤治療の進歩は目覚ましく、第1選択の標準的化学療法はいくつかの抗癌剤を併用したFOLFOX(L-OHP+infusional 5-FU/LV併用)またはFOLFILI(CPT-11+infusional 5-FU/LV併用)であり、現在では生存期間中央値が20ヶ月を越える時代となっています。更に分子標的治療薬であるBevacizumab(商品名:アバスチン)の導入により、生存期間中央値の延長が報告されています。また原発巣切除術後補助化学療法の標準治療は,従来は5-FU/LV療法でしたが、大規模無作為化第III相試験から高リスク結腸癌症例の術後補助療法としてのFOLFOXの有効性も実証されました。

以上のように、切除不能転移性・再発大腸癌に対するFOLFOX/FOLFIRI療法や高リスク大腸癌に対する原発巣術後補助化学療法としてのFOLFOX療法の有効性が明らかになっている現在において,大腸癌肝転移の手術症例に対する補助化学療法としてもFOLFOX療法を中心とした全身化学療法は有効な治療手段の一つである可能性が高いと考えられます。従来、肝切除術後の癌化学療法に関しては治療効果および患者様の外来通院の煩雑さなどの点から否定的な意見が多く存在しましたが、L-OHP, CPT-11, Bevacizumabなどの新規抗癌剤が登場し有効性が確立された現在では、肝切除術対象症例に対する全身補助化学療法は不可欠な治療法として位置付けられるものと考えます。

治療成績の向上を目指して

更なる治療成績の向上のためには、有効性が確立された新規抗癌剤を積極的に使用していくことが重要です。究極の局所療法である肝切除術と最新の癌化学療法は相反する治療法ではなく、両者は車の両輪のような治療法として位置づけられるものであり、この両者の発展により大腸癌肝転移の治療成績はさらに高い領域に駆け上がるものと考え、以下の臨床試験を当教室では実施中です。当科での治療をご希望される方は、是非現在の主治医とご相談のうえ、東北大学病院肝胆膵外科外来へ紹介状をお持ちの上ご来院ください。

(1) 大腸癌肝転移術後の補助化学療法としてのOxaliplatin+5-FU/l-LV療法(mFOLFOX6法)の第II相臨床試験
(2) 同時性肝転移を有する進行結腸・直腸癌に対する肝切除前mFOLFOX6+ Bevacizumab療法の有効性と安全性の検討(第II相臨床試験)

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