東北大学病院 肝胆膵外科・胃腸外科

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肝内結石症(かんないけっせきしょう)

肝内結石症とは?

肝臓の重要な機能のひとつに胆汁という消化液の産生があります。胆汁は胆管の中を流れて、十二指腸に流入します。肝内結石症(以下本症)は、胆管のうち肝臓内に存在する胆管に結石ができる病気です。

胆嚢結石症や総胆管結石症と異なり、良性の病気でありながら複雑な病態を示し、完治が難しく再発を繰り返すことが少なくありません。治療も難しくまた治療後の再発率が高いことが知られているため、本症は難治性疾患として取り扱われており、厚生労働省特定疾患の1つとして研究班が組織され、取り扱い規約の整備や重症度判定基準、治療指針が策定されています。

稀な病気ですが、1961年から2001年までの過去40年間、当科で本症の治療として手術をうけた患者さまは193人にのぼり、国内では有数の施設として、この研究班の研究協力者として調査・研究を遂行してきました。

肝内結石症の患者さんはどのくらいいるのですか?

平成11年度の厚生労働省研究班調査では、日本全国で5,900人の患者さまが病院にかかったと推定されました。しかしながら、新たに本症を発症することは少なく、年間新規症例は推定1000例程度であり、日本では減少傾向にあります。衛生環境がよくなり食べ物が大きく変化したことが関係しているものと思われますが、具体的に何が関係したかは不明です。

肝内結石症はどのような人に多いのですか?

今までの調査では、特にこういう人に多いということはありません。肝内結石症の患者さんの男女比は男1:女1.2で、平均年齢は男性63歳、女性64歳という調査結果はあります。本症の発症頻度は、地域により著しい差があり、日本を含む東アジアに頻度が高く、類似した人種的背景を持つ場合でも大きな地域差が認められるのも特徴です。都市生活者では発症頻度が少ないと考えられています。

肝内結石症の原因はわかっているのですか?

肝臓の中の胆管は、本来スムーズに走行し合流していますが、本症の患者さんでは、胆管が膨らんでいたり狭くなっていたりしていることが多く、このために胆汁が澱みその結果結石ができるのではないかと考えられています。ただし、なぜ胆管の形が変化するのかはわかっていません。

肝内結石の多くはビリルビンカルシウムを主成分とする茶褐色の結石です。ビリルビンは胆汁に含まれる黄色の色素です。当科で経験した193例中174例(90.2%)はビリルビンカルシウム石であり、その成因に細菌感染を伴った胆汁うっ滞が密接に関与していると考えられます。一方、コレステロールを主成分とする黄色の石ができることがあり、近年多く報告されるようになりました。肝内コレステロール結石症の原因も明らかではありませんが、血清コレステロールとの関連は少ないものと考えられています。

先天性あるいは遺伝性因子の関与はたいへん少ないと考えられています。家族の中や兄弟で肝内結石症がふたり以上みつかることはまれです。むしろ食事内容や衛生環境といった後天性因子が関与している可能性が高いと考えられています。酒やたばことの因果関係や、職業との関連は否定的です。

肝内結石症ではどのような症状がおきますか?

特徴的な症状はありません。腹痛や発熱といった症状がほとんどです。黄疸が見られることもあります。これらは結石が胆汁の流れをさまたげるためと考えられています。

肝内結石症の診断にはどのような検査が必要ですか?

近年の診断法の進歩はめざましく、腹部のCT検査、超音波検査で肝内結石症は診断されます。また腹部MRI検査も最近では用いられるようになってきました。

肝内結石症にはどのような治療法がありますか?

治療は、外科手術と手術を行わずに結石を取る方法に分かれます。
本症の手術方法としては、結石の摘出・除去のために胆管を切開して結石を摘出・除去する「切石術」と結石の存在する部分を切除する「肝切除術」に大別され、胆汁うっ滞を解除するための付加手術としてT-チューブドレナージ術、胆道再建術、胆管消化管吻合術、十二指腸乳頭括約筋形成術が施行されます。診断技術が向上し発症早期に発見されることが多くなり、内視鏡技術の発達が重なり、開腹手術としての「切石術」は減少傾向にあります。全国的に見ても、肝切除術がもっとも多い手術的治療法となりました。当科でも手術をうけた患者さま193人中84人が肝切除術を受けており、1991年以降はわずかな結石を残してしまうケースが激減いたしました。一方、手術を行わずに結石を取る方法としては、内視鏡(経皮経肝胆道鏡:PTCS)による治療が普及しています。

本症の治療に際しては結石の除去と胆汁うっ滞の解除を目指して、当科はそれぞれの患者さまにの病態に即した最適な治療法を選択して提示させていただきます。

肝内結石症はどういう経過をたどるのですか?

一回の治療でなおってしまう人は半分以下で、多くの人で数年のうちに再発を認め、難病といわれる由縁です。当科で治療をうけた患者さまの再発率は約23%であり、再発した場合には、PTCSなどの非手術的な治療法が行われます。

再発をくりかえすと、胆管の炎症が重症になったり、肝機能が低下したりして、死亡に至ることもあります。また、本症の患者さんに肝内胆管癌が発生してくることもあり、当科での胆管癌の合併頻度は約5%でありましたので、見落とさないように注意深く経過観察する必要があります。

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