膵臓の炎症を繰り返してしまう方へ

急性膵炎

(1)急性膵炎について

急性膵炎は、突然起こる膵臓の炎症であり、アルコールや胆石などが原因でおきます。症状は腹痛で発症することが多く、重症化するとショックや敗血症などを合併して、命の危険があります。点滴や鎮痛剤の投与にて加療を行いますが、重症例では高度医療のできる病院へ転院して集中治療を行うことが必要となります。

 
(2)急性膵炎の外科治療

以前は、急性膵炎に対して膵床ドレナージや開腹ネクロセクトミーが行われていましたが、現在は内視鏡的治療を中心とし,より低侵襲な治療から開始するステップアップアプローチが主体となり、外科手術が行われることは少なくなりました。
経皮的ドレナージからのステップアップとして、Video-Assisted Retroperitoneal Debridement (VARD)や、内視鏡的アプローチ、経皮的アプローチが困難な場合にネクロセクトミーを行う場合があります。

 
(3)患者さんへ

急性膵炎は、内視鏡的・経皮的ドレナージを主体としてステップアップアプローチによる治療が行われます。VARDやネクロセクトミーといった外科手術の経験がある施設は数多くありません。外科手術の適応や術式についてはお困りの場合には,当科にご相談いただけますようお願いします。

慢性膵炎

(1)慢性膵炎について

慢性膵炎とは、正常な膵臓組織が脱落して、慢性的な線維化が生じることで、膵臓自体の機能が徐々に失われていく病気です。原因は飲酒がもっとも多く、その他胆石性・特発性(原因不明なもの)が挙げられます。
慢性膵炎の症状は腹部・背部痛などの疼痛が初期の症状ですが、病状が進行すると膵臓機能が低下し、消化吸収障害に伴う体重減少、下痢や、膵内分泌機能荒廃に伴う糖尿病の悪化が高頻度で見られます。

 
(2)慢性膵炎の外科的治療

慢性膵炎の治療は、禁酒、禁煙を行い、腹痛などの症状に対する薬物療法などが治療の中心になります。膵管に狭窄や膵石などの所見がある場合は、内視鏡によるステント留置や体外衝撃波結石破砕術を行うことがあります。
薬物治療・内視鏡治療による病状のコントロールが困難な場合、外科的治療が行われます。

 

慢性膵炎の手術は、①膵液の流出障害により主膵管の拡張が見られる場合に膵液のドレナージを目的とした、膵管減圧術と、②炎症が強い部位を切除して除去する、膵切除術の2つに大きく分けられます。

①膵管減圧術

びまん性に膵臓の石灰化を認め、主膵管拡張が見られる場合などが適応となります。膵管減圧術としては、長軸方向に膵管を切開して、尾部から頭部にかけて小腸と側々吻合するPartington手術、膵頭部に炎症性腫瘤が見られたり膵石が存在した場合には上記の膵管空腸側々吻合術に加えて膵頭部の部分切除(=芯抜き)を付加するFrey手術が挙げられます。慢性膵炎診療ガイドラインでは、Frey手術が第一選択となっており、当科では本邦で初めてFrey手術を施行し、日本最大の症例数を有しています。

②膵切除術

膵管狭窄の程度や部位によって(幽門輪温存)膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術を施行することがあります(膵手術)。この場合、膵腫瘍に対する手術に準じますが、膵機能温存等の観点から、また手術侵襲が大きいので①の術式で対応できな場合や、悪性腫瘍の合併を疑うとこなどに施行されます。

 

手術によって、疼痛の軽減や膵機能進行防止などの効果が見られます。特に疼痛に関しては8割以上の方で効果があるとされています。手術適応を十分に検討した上で施行すれば、非常に有効な治療法と言えます。ただし、手術を行っても慢性膵炎を根治させることはできないため、食事栄養療法や薬物療法、禁酒といった内科的加療の継続は必須です。

 
(3)患者さんへ

慢性膵炎は、比較的珍しい疾患であり、外科手術の経験がある施設は多くありません。そのため、手術適応や手術術式の判断がつかず、手術のタイミングを逃してしまうことが少なくありません。また、膵管減圧術やFrey手術が適当である症例に対して、膵切除術が選択される場合もありえます。
外科手術の適応や術式についてはお困りの場合には,当科にご相談いただけますようお願いします。

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