膵臓手術術式

膵頭十二指腸切除術について

膵頭十二指腸切除術は膵臓癌や胆道癌に対して広く行われている手術になります。
この手術では膵臓の頭側と十二指腸、胃の一部、胆管が摘出されます。

切除後の再建について

対象となる臓器が摘出された後には再度食べ物の通り道を作る必要があります(再建)。再建には小腸の一部を使用し、
①小腸と膵臓、
②小腸と胆管、
③小腸と胃をつないだ後に、流れ道をもう一つ作るために④小腸と小腸をさらに吻合いたします。これによって食べ物の道筋と、膵液や胆汁といった消化酵素がうまく混ざり合うような形を作ることができます。





手術後の合併症

この手術で最も怖い合併症に膵液漏があります。これは消化酵素の一つである膵液がおなかの中に漏れてしまう合併症になります。膵液が溜まり。周りの臓器特に動脈を溶かしてしまうと、動脈瘤というこぶができてしまい、これが破裂することで大出血につながる恐れがあります。
このほかにも、胆管と小腸をつないだところが漏れてしまう胆汁漏や、胃と小腸をつないだところの流れが悪くなってしまい、手術後の食事が進まなくなる胃内容排泄遅延といった合併症がございます。
また膵臓の1/3を摘出しますため、手術後の糖尿病になってしまう可能性があります。我々はこのような合併症を抑えるべく適宜しかるべき対応を行っております。

手術後の経過

当科では手術を行ったのちの早期離床を推奨しております。なるべく早い時期から積極的に動いていただき、術後に筋力が低下することの予防に努めております。
手術経過2週間目に一度CT検査を行い、おなかの中に出血をきたしそうな病気がないことを確認したうえで退院という流れになります。

手術後の合併症
膵液漏

膵臓を切離したのちに、断端から膵液が漏れてしまうことがあります。膵液の溜まりに細菌などによって感染を併発しますと、動脈瘤といったさらなる合併症を引き起こす場合があります。動脈瘤が破裂した場合には大出血などをきたす場合がありますので、その扱いには特に注意が必要とされております。

糖尿病

膵臓は血糖のコントロールを行う上で重要なインスリンを産生している臓器になります。手術によって膵臓が失われることで、インスリン分泌量が減少し、糖尿病を発症する可能性があります。

重症感染症(脾臓を摘出する場合)

脾臓は体の中で様々な免疫にかかわる臓器になります。このため脾臓を摘出することで稀ではありますが、劇症型感染症を引き起こす可能性がございます。このため術前からその予防として肺炎球菌ワクチンの接種などを行っていただくことになります。

手術後の経過

食べ物の通り道に対する影響が少ないため、手術翌日から食事摂取が可能となります。手術時におなかの中に留置した管から定期的に検査を行い、膵液の漏れなどがないことを確認し、術後4-5日で管を抜くことになります。手術後10日前後で腹部のCT検査を行い、膵液漏やその影響などがないことを確認したうえで、退院が可能となります。

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