食道癌は診断のところで述べた癌の深さ、リンパ節転移、遠隔転移の有無の3つの要素から病期が決められます。そして病期に応じて最適と思われる治療方針が示されますが、全身状態を考慮しながら患者さんとご家族と十分な相談の上、治療方針を決定します。
食道癌の治療法としては大きく①切除術、②放射線治療、③化学療法(抗がん剤治療)があり、単独もしくはこれらの治療を組み合わせて行います。切除術に関してですが、非常に早い段階(ステージ0)で見つかった癌は内視鏡(胃カメラ)で切除を行うことができます。しかし食道癌は早い段階からリンパ節転移を高率に起こすため、ステージⅠより進んだ食道癌は病変の部分だけを切除するだけでは不十分でありリンパ節郭清(リンパ節を切除することを郭清と言います)を同時に行う外科治療(食道切除術)が必要となります。食道癌診断・治療ガイドライン(2012年4月版)で外科治療が推奨されているのはステージⅠ、Ⅱ、Ⅲです。ステージⅡ、Ⅲに関しては術前治療を行うことで手術単独よりも治療成績が向上する可能性が示され、術前化学療法を行ってから手術を行うことが推奨されています。ステージⅣは食道以外の臓器に転移がある(M1)、もしくは食道癌が大動脈や気管などに浸潤(T4)している状態です。手術では取り切れない状態であり通常外科治療の適応とはなりません。従って化学療法、化学放射線療法を中心とした治療が行われますが、状況によっては緩和医療(癌を治すのではなく、患者の痛みや苦痛をとる治療)が行われます。
以下に当院における食道癌の治療アルゴリズムを示します。
当院における食道癌治療のアルゴリズム