癌の進み具合(進行度)を病期と言います。病期はステージとも呼ばれ、早い段階(ステージ0)から最も進んだ段階(ステージⅣ)まで5つの段階に分けられています。病期は食道にできた癌の深さ(深達度と言います)、リンパ節転移があるか、食道以外の他の臓器に転移があるか(遠隔転移といいます)、の3つから判断します。
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食道癌の病期(ステージ)
食道癌診断・治療ガイドラインより抜粋(2012年4月版) |
癌の深さ(T因子)
食道にできた癌の深さが進行度に関係し、長さや広がりなどは関係しません。食道の壁は大きく分けて内側(食べ物が通る側)から粘膜→粘膜下層→筋層→外膜から成っています。食道癌は粘膜からできるので癌の深さは順に粘膜層(T1a)→粘膜下層(T1b)→筋層(T2)→外膜(T3)と大きくなっていきます。更に進んで食道の外にある臓器(気管や大動脈など)に達するとT4と診断されます。
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食道癌深達度(T因子)
食道癌診断・治療ガイドライン(2012年4月版)より改変して抜粋
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リンパ節転移(N因子)
食道癌は高率に、かつ広範囲にリンパ節転移を起こす癌です。癌の深達度が深くなるにつれてリンパ節転移を起こす確率が高くなります。転移を起こしやすいリンパ節は頸部、胸部の食道や気管の周り(縦隔といいます)、腹部の胃の周りのリンパ節です。したがって手術の場合はリンパ節転移を起こしやすい頸部、胸部(縦隔)、腹部の3つの領域のリンパ節を食道切除と同時に行います。同様に放射線治療も食道癌の部分だけでなく転移を来たしやすい食道周囲のリンパ節にも放射線を照射することを原則としています。
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食道癌所属リンパ節
食道癌はリンパ節転移を起こしやすい癌です。食道は主に胸の中にありますが、リンパ節転移は胸の中(縦隔)だけでなく、首の回りやお腹の方など広い範囲のリンパ節に転移を来します。
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他の臓器への転移(M因子)
食道以外の他の臓器へ転移を遠隔転移といいます。癌細胞が大きくなると癌細胞が血管などの流れにのって食道から離れた遠い臓器に転移を起こします。転移を起こしやすい臓器は肺、肝臓、骨などです。遠隔転移がある状態ではT因子、N因子の如何にかかわらずステージⅣとなり癌が最も進んだ段階になります。遠隔転移があると、現在の医学では癌を完全に治すことは非常に難しいのが現状ですが、手術的あるいは非手術的な様々なアプローチによる集学的治療を行っています。