閉塞性動脈硬化症
動脈硬化によって血管が狭くなるため、足に血液が流れにくくなる病気です。初期には足の冷たい感じから、歩いた時のふくらはぎの痛みなどの症状が現れます。進行すると足の趾(ゆび)先やかかと、場合によっては膝から下が壊死に陥ります。この病気は症状によって治療法を選択することが好ましく、軽症の方には内服などの内科的治療、運動療法などのリハビリ治療を含め多くの選択肢を用意しています。希望によってはカテーテル治療や手術を行います。足が壊死した患者さんは急いで治療をしないと足を失ってしまいますので積極的にカテーテルや手術による治療を行っています。
閉塞性動脈硬化症を心配している患者さんへ
歩くと太ももやふくらはぎが痛くなる症状を訴える方の4人に3人は閉塞性動脈硬化症とは関係のない病気によるものです。また、足の冷感(冷たい感じがする)を訴える患者さんの多くはやはり閉塞性動脈硬化症ではありません。どのように見分ければよいのでしょう。この病気に慣れたかかりつけの医師がいれば足の脈を診察してもらうことでおおよその判断がつくことがあります。また、両腕と両足首に血圧計を巻いて足への血流を調べるABIという検査によって更に詳しく診断することができます。ABIの検査は、最近は多くの医療機関でも行えるようになってきています。
閉塞性動脈硬化症と診断された患者さんへ
いつも足が冷たい、歩くと足が痛くなって他の人と一緒に歩けないなど、閉塞性動脈硬化症の症状がでると非常に不快なものです。また、「足の血が流れなくなると足が腐ってしまうぞ」と脅かされて受診される方もいます。実際には慢性的な経過をたどる閉塞性動脈硬化症の患者さんでは、足の壊死まで進行することは少なく、落ち着いて治療を考えてよいことがほとんどです。慢性的な症状の安定した閉塞性動脈硬化症の患者さんが考えるべきことは2つあります。
1) 治療は患者さんの希望に沿うべきであること。
閉塞性動脈硬化症の治療は多岐にわたっています。
◆禁煙 …禁煙のみで症状が改善することがあります。
◆運動療法 …じっくり通院できる方はリハビリテーション科と連携し運動療法を行っています。
◆薬物療法 …外来での基本の治療です。いろいろな作用の内服を症状に合わせて処方します。
◆血管内治療…カテーテルにより狭くなった血管を広げる治療です。入院が必要です。
◆外科治療 …足の血管の狭くなった部分を形成したり、バイパスをしたりします。
◆その他、研究・開発中の治療。
多くの治療の選択肢を持ち、患者さんに提示できることがこの病気に対しては大切なことであると考えています。
2) 全身に動脈硬化の病気を持っていると自覚すること
動脈硬化は全身病です。足の血管がつまるということは全身の血管にも動脈硬化が起こっている可能性があります。実際、今までの調査で、この病気を持っている方の半分程度に脳、心臓の血管の病気が潜んでいると言われています。
重症の閉塞性動脈硬化症の患者さんへ
血液の流れが悪くなると足先に潰瘍ができたり黒く壊死が起きたりします。このような状態を放置すると多くの方が脚を失うことになります。このような患者さんには早めに入院してもらい、集中的に治療を行います。カテーテルやバイパスによる血行再建と同時に傷の手当てを行い、何とか脚を失うことを避けるようにしています。不幸にして脚を救いきれずに切断された患者さんに対してもリハビリテーション科の専門の医師と連携し義肢や補助具によりなるべくもとに近い生活を送ってもらう努力をしています。
閉塞性動脈硬化症は専門科での診療が不可欠です。