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肝がん・消化器疾患

当班では主に肝がん(肝細胞癌・転移性肝癌)・肝腫瘍の治療を行っております。
特に、肝細胞がんに対しての外科的な治療である肝切除は年間40例、これまでに400例以上の症例の治療を行ってきました。最近では、腹腔鏡を用いた肝切除症例も増えてきています。患者様の早期回復、早期退院など、よい結果がでています。

肝がん・肝腫瘍 門脈圧亢進症 胆道系腫瘍・膵腫瘍

肝がん・肝腫瘍

肝腫瘍には多くの疾患が含まれています。大きくわけて、良性腫瘍悪性腫瘍があり、悪性腫瘍も、原発性肝がん(最初から肝臓にできたがん)と転移性肝腫瘍に分けられます。良性腫瘍でも、できた場所や大きさ、悪性との区別の難しいものは手術の適応になることがありますが、一般的には悪性腫瘍が手術の適応となります。
原発性肝がんの約90%は肝細胞がんで、このうちのほとんどがC型肝炎やB型肝炎ウイルスの感染が原因です。最近では、肝炎ウイルスとは関係なく発症してくる肝がんもあり、徐々にその数が増えてきています。肝炎ウイルスに感染した既往のある患者様は定期的に検査を受けておられる方が多く、初期の段階で発見されるケースが多いのですが、ウイルスとは無関係に発症してくる肝がんでは、他の病気の検査の際に偶然発見されるか、あるいは大きくなって症状がでてから発見されることが多いので、早期発見に向けた研究が行われています。
肝細胞がんの治療
肝細胞がんの治療には外科的な肝切除、肝臓の腫瘍に針をさして治療を行う経皮的局所療法(エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法)、カテーテルによる治療(肝動脈化学塞栓療法)、化学療法などがあります。その他に、放射線療法や肝移植*などが施行されることもあります。
がんの状態や患者様の体調、肝機能により選択できる治療が異なり、単独あるいは組み合わせて治療を行います。
肝切除は肝臓の機能が比較的保たれている患者様に選択される治療法です。手術適応になるかどうかは腫瘍の状態に加え、肝予備能を予測して切除量を決定します。
当科では肝細胞がんに対する外科的な切除(肝切除)を年間約40例行っています。
 *肝臓がんにおける肝移植: 肝細胞がんでも、個数や大きさ、遠隔転移の有無により肝移植の適応となることがあります。詳しくは肝移植のページをご覧ください。


肝細胞がんの治療成績
肝がんの手術成績は一般的に5年生存率で50%といわれています(表2)。この数字は全国の肝切除を受けた約25000名の患者様の追跡調査(日本肝癌研究会)にて集計された数字です。しかし、この25000名の中には、5年生存率で70%を超える集団と、20%に満たない集団とが含まれています。それは、肝がんの状態(大きさ、個数、広がり、転移)によって成績が異なるからです。肝がんの状態(進行度)を表す言葉として、病期(ステージ)があります(表1)。日本肝癌研究会では、腫瘍因子(大きさ、個数、脈管浸潤)、リンパ節因子、遠隔転移の有無により5段階に分類しており、この分類が日本国内で広く使用されています(表1)。
この病期で分類すると、先ほどの25000名の方々の生存率は表2のようになり、病期が進行するほど(Ⅰ⇒Ⅱ⇒Ⅲ⇒ⅣAⅣB)生存率が低くなります。
当班ではこれまでに400例以上の肝細胞がんに対し手術を行っており、2012年9月現在での病期ごとの生存率は表3の通りです。

(表1)進行度分類(原発性肝癌取り扱い規約 第5版より)
病期
(ステージ)
腫瘍因子
3項目の合致数
リンパ節因子
あり / なし
遠隔転移
あり / なし
a.腫瘍が1個
b.大きさ2㎝以下
c.脈管(門脈、肝静脈、胆管)に浸潤なし
リンパ節転移 肝臓から離れた
場所への転移
3項目合致 なし なし
2項目合致 なし なし
1項目合致 なし なし
ⅣA すべて合致せず なし なし
腫瘍破裂 なし なし
問わず あり なし
ⅣB 問わず 問わず あり

(表2)病期による肝切除後の5年生存率(日本肝癌研究会追跡調査より)
病期(ステージ) 5年生存率(%)
73
59.7
39.5
ⅣA 21.4
ⅣB 16.5
全体 54.2

(表3)当班における肝細胞がんの手術後の成績
病期(ステージ) 3年生存率(%) 5年生存率(%)
100 75.0
86.3 73.1
74.9 51.0
ⅣA 25.3 12.6
ⅣB 0 0

肝細胞がん以外の肝悪性腫瘍
頻度的にはそれほど多くありませんが、原発性肝がんに含まれる、肝内胆管がん、細胆管細胞がん、胆管嚢胞腺がん、混合型肝がん(肝細胞がんと、肝内胆管がんの混合型)、肉腫などの切除もおこなっています。
また、小児に多い肝芽腫の治療も、小児外科と協力して行っています。
肝良性腫瘍
良性腫瘍は基本的には経過観察で済みますが、大きさ、場所により破裂の危険性があるとき、悪性腫瘍との区別が困難な場合に手術の適応となります。
代表的なものとして、肝血管腫、肝腺腫がありますが、、その他にも稀な疾患として、血管脂肪腫やリンパ管腫などの切除も行っています。
転移性肝腫瘍
肝臓には様々な癌が転移します。癌の種類によっては化学療法が効果を示すものもありますが、外科的な切除の治療効果が高い場合や、化学療法と組み合わせて行うと治療効果が高くなると判断された場合などに手術が選択されます。
当班では大腸がん肝転移、胃がん肝転移、胆嚢がん肝転移、子宮がん肝転移などの手術を行っております。
腹腔鏡下肝切除術
これまでの肝切除は腹部に大きな傷をつける開腹手術で行われてきましたが、術後に創部の痛みのために活動性が落ちてしまう患者様もおります。当班では腹腔鏡下肝切除術を導入し、これまでに40例に施行していますが、創部痛の軽減のみならず、早期の回復がみられ、良好な結果が得られております。
現在のところ、肝切除術の全症例が腹腔鏡で行えるわけではありませんので、その適応に関しては担当医にご相談ください。

門脈圧亢進症

門脈圧亢進症とは、文字通り門脈の圧が亢進(高くなる)ことにより起こる疾患です。原因としては肝硬変が多く、そのほかに特発性門脈圧亢進症やバッドキアリ症候群などがあります。門脈圧が亢進すると、門脈に流入する血管の圧も上昇し、食道や胃に静脈瘤ができます。また、脾腫がみられるようになると、脾機能亢進(白血球減少、血小板減少)をきたすことがあります。食道や胃の静脈瘤は破裂すると命に係わりますので、内科的治療が困難になった症例では、脾臓摘出術や、胃と食道周囲の血管を処理するHassab (ハッサブ)手術が行われることがあります。

胆道系腫瘍・膵腫瘍

胆道とは、肝臓で作られた胆汁の通り道のことを指します。部位により名前が異なり、肝臓の中では肝内胆管、肝臓の外で十二指腸までを肝外胆管といい、十二指腸への開口部は乳頭部といいます。胆嚢はその途中にある袋で、一時的に胆汁を貯めるものです。食事が腸の中に入ってくると、その刺激で胆嚢が収縮し、貯めていた胆汁を排出します。肝内胆管がんは前出の原発性肝がんに含まれますので、肝外胆管、乳頭部、胆嚢にできたがんを胆道がんと呼んでいます。腫瘍の進展度によって、手術、化学療法、放射線療法などが単独、あるいわ組み合わせて行われます。
膵臓は胃の裏側に存在する臓器で、血糖値をコントロールするインスリンやグルカゴン、主に脂肪の消化を助ける消化酵素の含まれる膵液を分泌する臓器です。膵液は膵管という膵臓の中の管を、胆汁と同じように十二指腸に流入します。膵臓にできたがんは進行がんで発見されることが多く、消化器がんのなかでも予後が悪いことが知られています。治療は胆道がんと同様に、その進展度によって手術、化学療法、放射線療法などが選択されます。
最近では、胆道がんや膵臓がんで、周囲の血管に浸潤したような症例でも、適応があれば合併切除を行うことにより、生存率が改善しています。当班では、肝移植や膵移植の知識、技術を生かし、がんの周囲の血管の合併切除や再建の必用な症例の手術も行っています。適応については担当医にご相談下さい。

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