東北大学病院 肝胆膵外科・胃腸外科

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がんばろう東北!

がんばろう東北 ―東日本大震災からの復興を願って―

消化器外科学分野(肝胆膵外科) 教授 海野倫明

2011年3月11日、この日を前後してすべてが変わった。
当日熊本での研究会に出席していた私と片寄准教授は仙台で大地震との報道を聞き、名古屋まで飛行機、そこからはレンタカーを借り新潟経由陸路で翌3月12日夜には仙台に戻った。病院の災害対策本部に駆けつけると、里見病院長の指揮のもと多くの科長・医局長がさまざまな業務に当たっていた。医局からは肝胆膵外科江川准教授が、震災当日より帰宅せずに救急部バックアップ体制作りと医師の割り振りを担当し、獅子奮迅の働きを見せていた。3月13日から江川准教授の業務を引き継ぐ形で海野が災害対策本部に入り、主に救急部バックアップ、医師派遣業務、および月曜日から大勢が来院するであろう外来業務の対応を行った。まず最も被害が甚大である石巻と気仙沼に大学病院医師を送り込むために、大学が所有しているマイクロバスを借り上げ、石巻行、気仙沼行の定時運行バスとして、連日20名近くの医師を送り込んだ。また医師・看護師・薬剤師からなる避難所救護班を作りこれもバスで石巻に送り込んだ。
3月14日月曜日の外来は、病院としての機能が無い状況であったが多数の外来患者が来院した。外来1階フロアーに、内科・外科・精神科・産婦人科・眼科・その他診療科からなる相談窓口を設営し、急患しか診察できないこと、採血・レントゲン検査は出来ず薬は1週間しか処方できないこと、急患以外入院はできないこと等、来院者への説明を行った。交通網が寸断されたため予定よりも少ない来院者で大きな混乱は見られなかった。病棟は被害はほぼ無かったが、都市ガスの供給がストップしたため滅菌ができず手術は臨時のみとなったが、約2週間でほぼ元通りに復旧した。

 まさに未曽有の大震災であるが、東北大学病院はマスコミを賑わすことなく黒子に徹していた。今、振り返ってみると大学病院としての危機管理は大変優れていたと思う。これはひとえに病院首脳部の強いリーダーシップによるものが大きい。まず職員に「大学病院は一致団結しこの危機を乗り越える」と宣言して皆を鼓舞し、失敗を恐れずどんどん新しい手を打った。特に「被災地からの患者は断ることなく全部受ける」というメッセージのもと、すべての病棟が文句を言わず粛々と働いた。うまくいかない事象もあったが、病院長が「俺に免じて許してくれ」、と頭を下げることにより皆が納得し次に進んでいった。また東北大学病院は人材豊富であることも実感した。他科の医局長や若手がどんどん積極的に動いている様子は、東北大学の将来は明るい、と感じられるものであった。今回の大震災を通して東北大学病院の結束が一層強まったと思う。

 現医局員とその家族には、不幸中の幸いで人的被害はなかったが、当科OBである石巻市立雄勝病院長の狩野研次郎先生が病院勤務中に被災されお亡くなりになった。丙辰会として雄勝病院を永年支えてくれた狩野先生に、謹んで哀悼の意を表しご冥福をお祈りする。また石巻市立病院は津波により孤立しその機能を失った。その他にも多くの医師が診療所や自宅、車などの物的被害を被り、また多大な精神的損害を受けた。被災された医師には、いち早く「医局は皆さんの外科医としてのキャリアを生涯にわたりtake careします」というメッセージを送った。今後も医局として被災された医師を物心両面で支えて行く所存である。

 この東日本大震災により日本は第2次世界大戦以来という国難を迎えている。震災被害のみならず、福島原発問題、電力不足と、それら要因による不景気など、今後も多くの試練が待ち受けている。あわせて、デマや風評被害などの人災も今後増えてくるように思う。すでに東北地方の大学や研修病院は、来年不人気になることが予想されている。科学者である医師がこのような非科学的なデマや風評を広めることが無いよう厳命したい。また、石原慎太郎氏が「我欲を捨てなければならない」と主張し都知事選に勝利したのが印象的であるが、まさに「我欲を捨てる」その時期である。医療のおいても然りである。無駄なものを削り、必要なもののみ構成され、研ぎ澄まされた機能美すら感じられる日本刀のような、切れ味鋭い外科医局を、東北大学を、日本を、創ってこの国難を乗り切っていきたいと強く思う。東北人は口下手であるが忍耐力があり底力がある、これを全国に示したい。若い力、年輩の力を結束し「がんばろう東北」、これを合言葉として外科学を志す諸兄の応援をお願いしたい。

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