教授挨拶
消化器外科学分野(肝胆膵外科)教授 海野 倫明
私たちの教室は、歴史ある「東北大学第一外科」を引き継ぐ形で、1999年に「生体調節外科学分野」と共に生まれた教室です。2つの科が協力して、主に消化器疾患の外科学を担当しています。
大学院講座名は「消化器外科学分野」ですが、診療科としては「肝胆膵外科」を標榜し、肝臓・胆道・膵臓の各種疾患の治療を担当しています。肝臓・胆道・膵臓の疾患、特に悪性腫瘍(癌)は、症例数が比較的少なく、診断・治療が困難であることから、専門的な知識と技能を持つ医師が治療に当たるべき疾患です。私たちは肝臓・胆道・膵臓疾患のスペシャリスト集団としてチームを組んで疾患の診療に取り組んでおり、外科治療のハイボリュームセンターとして、東北地方はもとより全国から数多くの患者を集め手術を行っております。
症例が多く集まることにより、いくつかの利点があります。多くの肝臓・胆道・膵臓疾患を経験することにより、診断・手術・治療・患者サポートなどの習熟度が上がります。また多くの症例が集まることにより、新しい臨床研究が生まれ、新しいエビデンスを作ることを目標にしています。また次世代を担う消化器外科専門医、特に肝胆膵外科のエキスパートの育成も行なっています。
肝癌・胆道癌・膵癌の治療は、癌を残さずに切除すること(治癒切除)が基本です。私たちも治癒切除を目指して手術治療を行なっています。しかしながら、これらの進行癌は治癒切除を行なったとしても、治療成績の限界があることはすでに明らかにされています。私たちは手術治療に加え、副作用の少ない最適な抗癌剤治療や放射線治療を組み合わせ、治療を行なっています。
肝胆膵外科領域は難治性疾患が多く、手術も長時間となり合併症も少なくないことから、患者-医師間の厚い信頼関係を築き上げることがとても重要と考えております。外来受診時・入院時・手術前後の十分なインフォームドコンセント、看護師・栄養士・薬剤師などコメディカルの方々とのチーム医療、関連病院と連携したきめ細かなフォローアップを心がけ、「患者さんに優しい治療と高度医療との調和」を基本理念として診療に当たっています。
肝胆膵外科高度技能医について
肝胆膵領域における手術は消化器外科手術の中でも特に難易度の高い手術が多く、その治療には高度な専門性が要求されます。このことは術後成績にも影響を及ぼし、年間症例数が多いハイボリュームセンターでの加療が望ましいとされております。実際の手術時には専門性の高い知識と高度な技術が要求され、治療成績の改善にはその疾患に特化していく必要があると考えられ、日本肝胆膵外科学会では、肝胆膵外科専門医として肝胆膵外科高度技能専門医制度を発足いたしました。その取得には、専門施設での多くの手術を経験すること、手術時のビデオ審査によって、その技術が認められることが必要とされております。この専門医制度の誕生によって、我が国の医療水準の向上と、肝胆膵外科の一層の進歩がえられるものと大きな期待が寄せられています。
当施設では、本資格が発足した2011年より継続して合格者を排出しております。2014年まで全国に有資格者は93名と限られものではありますが、そのうちの6名が当施設の出身者であり、本資格者が勤務する全国有数の施設でもあります。
2014年度 全国合格者31名(内1名)
深瀬耕二
2013年度 全国合格者30名(内2名)
中川圭
乙供茂
2012年度 全国合格者20名(内1名)
元井冬彦
2011年度 全国合格者12名(内2名)
吉田寛
林 洋毅