減量・糖尿病外科
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高度肥満症とその治療
(高度)肥満症は欧米を中心として世界的に増加の一途をたどり、近年ではわが国においても年々増加している現状にあり、大きな問題となっています。
肥満症は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群などをはじめとした肥満に関連した合併症を発症するリスクが高いことが知られ、それに伴って平均寿命も短くなることも報告されています。
肥満症の治療方法は、まず食事療法・運動療法を中心とした内科的治療が行われますが、特に長期間の効果の維持は非常に難しく(リバウンド)なります。
そのような中で誕生したのが高度肥満症に対する外科手術である「減量手術」なのです。
減量・代謝改善手術とは?
この治療の最大の目的は、生命に関わるような可能性のある肥満に関わる合併症を改善することで、より健康に長く生きられるようにすることです。
その一部として、体重減少による容姿の改善や生活の質の向上などが得られると考えています。
減量手術を受けるにあたって大切なこと
手術を受けると簡単にやせられてリバウンドもしない、というわけではありません。患者さんご自身が自分の意識・生活のスタイルを変えていこうという努力もとても大切です。減量手術はその大きなきっかけでもあり、その後の栄養管理や運動・生活習慣の改善が手術と同じくらい重要となります。
当院では、糖尿病代謝専門医、麻酔科医、精神科医、看護師、管理栄養士、薬剤師、ソーシャルワーカーが連携し、術前から術後のケアを多方面からサポートします。
糖尿病に対する外科治療 -糖尿病外科-
減量手術には、糖尿病や脂質異常症、非アルコール性脂肪肝炎などの代謝疾患に対する非常に高い治療効果があることが分かっており、糖尿病をはじめとした代謝疾患の治療を主目的とした手術は「代謝改善手術」と呼ばれるようになりました。また日本でも、当初は「減量手術」と呼ばれていましたが、現在では「減量・代謝改善手術」と呼称されるようになりました。
減量・代謝改善手術は非常に効果が高く、欧米の論文では、手術による糖尿病改善率は86.0%であり、そのうち76.8%が治癒(薬を使用しなくても、HbA1cが正常)するとされています。
中でも消化管バイパスを伴う手術の方がより高い効果が得られることが分かっています。
糖尿病が改善する仕組みについては、消化管ホルモンや胆汁酸と言われる物質の影響が推測されていますが、未だ解明されていません。
しかしながら、その高い治療効果を受けて、世界糖尿病連合、アメリカ糖尿病学会からは、内科的治療で十分な効果が得られない肥満を伴う2型糖尿病に対しては、外科治療は妥当な治療法であるという共同声明が発表され、日本の糖尿病学会もこれを承認しました。
当院においても、減量手術後には非常に高い糖尿病改善効果を示し、7割以上の患者さんで糖尿病の寛解が得られ、術前にインスリンを使用していた方でも多くの患者さんでインスリン治療が中止できています。
まだまだこれからの分野ではありますが、(コントロール不良の)糖尿病に対して行われる外科治療として「糖尿病外科」が一般的に行われる時代が来るかもしれません。
減量・代謝改善手術の手術術式
当院で施行可能な手術術式は、スリーブ状胃切除術、スリーブ・バイパス術の2術式となります。なお、全ての手術は「腹腔鏡」という細いカメラを用い、小さなキズで低侵襲かつ安全に行われます。
なお、保険診療として施行可能な術式は、これまではスリーブ状胃切除術(2014年4月〜)のみでしたが、2024年6月よりスリーブ・バイパス術も保険適応となり、選択肢の幅が広がりました。
なお、保険診療として施行可能な術式は、これまではスリーブ状胃切除術(2014年4月〜)のみでしたが、2024年6月よりスリーブ・バイパス術も保険適応となり、選択肢の幅が広がりました。

(腹腔鏡の創部のイメージ)
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術
日本で最初に保険診療として認可された術式で、全国的にも最も多く行われています。またこの術式は世界的にも最も多く行われている、現在の減量・代謝改善手術のスタンダードとも言える術式です。胃の外側(大彎側)の大半を切除して、胃を細長く形成して食事摂取量を制限する術式です。
胃の大きさはおよそバナナ1本分くらい(150cc程度)になります。
また、胃の上部から分泌される食欲増進ホルモン(グレリン)が減少することで食欲を抑制する効果もあります。
シンプルで非常に有効な術式で、消化管バイパスを含まない分、栄養吸収に与える影響が少ないとされています。

腹腔鏡下スリーブ・バイパス術
スリーブ状胃切除術に十二指腸-空腸バイパス術を加えた術式で、食事摂取量を抑える効果に加え、栄養吸収を抑制することでより高い効果を発揮します。2018年4月より本術式は先進医療Aに認定され2024年6月からは保険適応となり、より高度な糖尿病を合併した患者さんに対して選択される術式です。
スリーブ状胃切除術を行った上で、十二指腸を離断し、さらに小腸も離断し、十二指腸と小腸を吻合します。
これにより食事が通過する小腸の長さが短くなることで栄養吸収が抑制されるだけでなく、体内でインスリン抵抗性が改善したり、消化管ホルモンや腸内細菌の状況が変化するなど、さまざまなメカニズムで高い代謝改善効果を発揮します。
非常に高い体重減少効果はもちろんのこと、特に糖尿病に対してとても大きな効果がありますが、術式として複雑かつ難易度が高いため、日本では当院を含めごく限られた施設で行われているのが現状でしたが、保険収載されることで件数の増加も見込まれています。

減量・代謝改善手術の適応は?
※2024年6月より保険適応が大きく変更されました。スリーブ状胃切除術の適応
- BMI 35以上の原発性肥満
- 内科治療抵抗性(半年以上の治療歴)
- 肥満症に伴う以下併存疾患を少なくとも1つ以上を合併している
(高血圧症、脂質異常症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪肝炎を含めた非アルコール性脂肪性肝疾患)
スリーブ・バイパス術の適応
- BMI 35以上の原発性肥満
- 内科治療抵抗性(半年以上の治療歴)
- 糖尿病を合併している
※BMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)(=kg/m2)で計算されます。
減量手術の適応とならない場合
- 二次性肥満:肥満が内分泌疾患、内服薬剤によって起こっている場合
- 重症の精神疾患があると判断した場合
- 全身麻酔・手術が困難である場合
- 薬物依存・アルコール依存症の方
- ご家族の理解が得られない場合
- その他
当科での減量手術症例数の推移

当院での診療の流れ

※上記は標準的な場合であり、細かくは個々の状況によって異なります。
栄養管理
減量手術は非常に大きな効果を持ちますが、特に食生活に関しては術前・後で非常に大きく変化します。このため、術前・後の栄養管理は非常に大切であり、当院では術前から管理栄養士が介入し、術前の減量、術後の食べ方や内容の指導を含め、個々の患者さんに合わせたサポートを行っています。
術前減量プログラム
当院では全ての患者さんに、「術前減量」を行っていただいています。術前減量は、内臓脂肪を含めた体脂肪の減少により、手術の安全性および術後合併症に対して大きくプラスにはたらくことがわかっています。
当院では低エネルギーですが栄養バランスに優れたフォーミュラ食(マイクロダイエット™)を用いた術前1ヶ月間の減量プログラムを採用しています。
フォーミュラ食とは、良質なたんぱく質を主原料にし、糖質、脂質を控え、ビタミン、ミネラルをバランス良く含んだ必須栄養調合食品のことを言います。
術前には、フォーミュラ食と一般食を組み合わせて行う低エネルギー療法で術前減量を行っています。
また、BMI 60を超えるような超重症肥満症の患者さんの場合には、術前の入院での強化減量プログラムもあり、状況により相談しながら診療を進めています。
術後の栄養管理
前項でも触れましたが、手術をすれば簡単に減量できる訳ではありません。手術後にはバランスのとれた食事を適切に摂取することが大切です。
スリーブ状に形成された胃の容量は約150ccに縮小しておりますので、術後には食べ方の工夫が必要となります。
手術後は、術後の時期に合わせて以下の3段階に食形態を分けて液状のものから徐々に固形物へ移行していきます。
また、スリーブ・バイパスの場合は特に、ビタミン・ミネラルが不足することもあるため、サプリメントの摂取を推奨しています。
術後の変化をしっかり理解し、健康的な身体と共に正しい食生活への一歩を踏み出しましょう。
術後の栄養管理についても、私たちの外来通院での検査はもちろんのこと、管理栄養士による詳細な説明・指導をさせていただき、最大限にサポートします。
術後の食事形態の段階
- ステージ I ー 液体のみの流動食。術後翌日から摂取開始となります。
- ステージ II ー 半固形食(少しやわらかいもの)。術後15日目から摂取開始。
- ステージ III ー 固形物の食事。術後約1ヶ月より摂取開始。
サポートグループ(患者会)
サポートグループ(患者会)は、治療の一環として位置付けられており、術後の患者さんたちが直面するさまざまな問題をお互いの意見を出し合いながら解決するのを助けること、あるいは術前の患者さんに対して術後の患者さんがアドバイスをすることによって治療に対する理解を深めることなどを目的としています。当院では、原則として年2回開催しており、その会ごとに医師や栄養士からの講演・話題提供や、理学療法士による運動指導など、その時によって様々なテーマを設けて行っています。
サポートグループ(患者会)に参加することにより、術後の仲間や我々スタッフとの交流・信頼関係が深まったり、食事のとり方や内容、運動療法などで新しい発見があったり、術前の患者さんの不安を緩和したりなど、様々な活用方法があるとても有用な会です。
術後はもちろん、術前の患者さんもふるってご参加下さい。
(※ なお、参加料金などはございません)